イベルメクチンの効果・副作用・服用できない人
イベルメクチンの目次
イベルメクチンの効果・先発薬
イベルメクチンは主に、寄生虫の駆除に効果があります。
寄生虫の神経や筋細胞に存在している、クロライドチャンネルに結合することで細胞膜内の透過性を上昇させます。
その結果、寄生虫を麻痺させることで、死滅、駆虫ができます。
イベルメクチンを含む薬の先発薬はストロメクトールという商品名です。
2002年の12月から販売されており、日本で処方されているイベルメクチンは全てストロメクトールとなります。
イベルメクチンの適応症と推奨度
イベルメクチンの適応症は、腸管糞線虫症と疥癬です。
腸管糞線虫症
汚染された土壌から感染幼虫が侵入することが原因で起こる疾患。幼虫は血流やリンパ流によって体内を移動し、小腸の上部で成虫になる。
糞線虫症の臨床試験結果
日本では、糞線虫陽性患者50人を対象とした臨床試験が行われました。
条件は、イベルメクチン約200μg/kgを2週間間隔で2回投与した場合というものです。
その結果、投与から4週間後の糞便検査において、98.0%(49/50)の駆虫率でした。
糞線虫の治療においては、高い有効性が確認されています。
海外における糞線虫の臨床試験では、イベルメクチンとアルベンダゾール・チアベンダゾール3つによるオープン比較臨床試験が行われています。
駆虫率を見てみると、イベルメクチンの有効性が高いことが分かります。
イベルメクチン | 比較対照薬 | ||
---|---|---|---|
アルベンダゾール | 国際試験 | 79%(22/28) | 43%(10/23) |
WHO試験 | 83%(126/152) | 45%(67/149) | |
チアベンダゾール | 国際試験 | 67%(10/15) | 87%(13/15) |
米国試験 | 100%(14/14) | 94%(16/17) |
主な症状は、一過性の肺炎、乾いた咳、呼吸困難、喘息など。
また、発熱や腹痛、下痢といった症状も起こる。
糞線虫症に対するイベルメクチンの推奨度
イベルメクチンの有効性が確立しており,世界的に使用されている(A).
引用:JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015―腸管感染症―
※推奨度:A~C(Aが最も高い)
疥癬
ヒゼンダニが皮膚に寄生することで起こり、人から人へと感染する疾患。
皮膚の外側の角質層に寄生し、年間8~15万人の患者がいるとされている。
主な症状は皮膚に起こり、赤い発疹や、かゆみを伴う。
疥癬の臨床試験結果
疥癬の臨床試験は、疥癬患者55人を対象とした試験がイタリアで行われました。
イベルメクチン約200μg/kgを単回投与による有効性を検査したものです。
イベルメクチン | プラセボ | |
---|---|---|
治癒率 | 74% | 15% |
この結果から、疥癬ではイベルメクチンは有効とされています。
疥癬に対するイベルメクチンの推奨度
CQ:イベルメクチン内服は疥癬治療に有効か?
推薦文:疥癬治療においてイベルメクチンは有効である.
推奨度:A(行うよう強く勧められる)
引用:疥癬診療ガイドライン(第 3 版)| 日本皮膚科学会ガイドライン
※推奨度:A~D(Aが最も高い)
イベルメクチンの服用方法
イベルメクチンは空腹の状態で水で服用してください。
服用の注意点
イベルメクチンは、人間用だけでなく動物用もあります。
アメリカでは動物用を購入・服用してしまったことによる、相談や副作用の例も報告されています。
人間用も動物用も有効成分はイベルメクチンですが、動物用は人間への安全性が確立されていません。
そのため、購入や使用する際には必ず人間用のイベルメクチンを購入しましょう。
イベルメクチンの副作用
臨床試験や使用成績調査によるイベルメクチンの副作用の発現頻度は以下の通りです。
試験名 | 発現率 | 対象 |
---|---|---|
腸管糞線虫症 (臨床試験国内) |
2.0% | 50例中1 |
腸管糞線虫症 (臨床試験海外) |
11.0% | 109例中12 |
腸管糞線虫症 (使用成績調査) |
6.1% | 309例中19 |
疥癬 (使用成績調査) |
1.6% | 750例中12例 |
副作用の主な症状は、めまい、吐き気、下痢、腹痛などがあります。
その他の副作用は以下の通りです。
頻度不明 | 0.1~5%未満 | 0.1%未満 |
---|---|---|
そう痒の一過性の増悪 蕁麻疹 AI-P上昇 下痢 食欲不振 便秘 腹痛 めまい 傾眠 振戦 無力症・疲労 低血圧 気管支喘息の増悪 |
そう痒 発疹 肝機能異常 AST・GOT上昇 ALS・GPT上昇 総ビリルビン値上昇 γ-GTP上昇 BUN上昇 貧血 好酸球数増加 LDH上昇 |
悪心 嘔吐 白血球数減少 リンパ球数増加 単球数減少 血尿 |
重大な副作用
イベルメクチンには重大な副作用があります。
・中毒性表皮壊死融解症
全身の広範囲で赤みが起こり、やけどのような症状が起こります。
・皮膚粘膜眼症
口唇や口腔、眼や鼻などの粘膜にただれが起こります。
・肝機能障害、黄疸
AST・GOT上昇やALS・GPT上昇に伴い、肝機能障害や黄疸が起こります。
・意識障害
昏睡や意識レベルの低下が起こります。
意識障害は2021年10月12日に新たに重大な副作用に追加されています。
関連の症例は4件あり、そのうち1件は死亡となっています。
イベルメクチンを使用する際には、副作用だけでなく重大な副作用にも十分注意してください。
イベルメクチンを使用できない方
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
・高齢者
安全が確立しておらず、一般的な高齢者には肝臓・腎臓・心機能の低下がみられるため。
・妊婦、産婦、授乳中の方
治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用可能。
妊娠中は安全が確立しておらず、動物実験では催奇形性が認められている。
・小児
体重が15kg未満への小児に対する安全が確立されていないため。
イベルメクチンの併用禁忌・注意薬
イベルメクチンの併用禁忌・注意薬は報告されていません。
常用している薬がある場合は、医師に相談の上使用してください。
イベルメクチンの豆知識
イベルメクチンは日本人の大村智さんが発見し、開発した治療薬です。
大村智さんはこのイベルメクチンの発見により、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞されています。
実は、大村智さんは静岡県伊東市内のゴルフ場から採取した土壌に、後々イベルメクチンとなるための物質を発見したそうです。
日本ではあまりなじみのないものですが、フィラリアの一種であるオンコセルカ症がナイジェリアで大流行した際にもイベルメクチンが治療薬として用いられました。
海外では、いまだに人間の駆虫薬としてイベルメクチンを摂取している地域もあります。
イベルメクチンの商品一覧
商品名 | イベルメクチン | イベルメクチン(ArrowLab製) | ストロメクトール |
---|---|---|---|
用量 | 12mg | 3mg | 3mg |
価格 | 4錠 1,900円~ |
4錠 4,850円~ |
4錠 5,900円~ |
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